月明かりの下、レオナは自分の森の入り口へと向かう・・・。
出会ってしまった・・。
ZEROを止める為の歯車の人間・・・。
まさか、と思った。
でも、自分の中で分かってはいた・・。
ただ、認めたくなかっただけで。
彼女は自分の夢の中でリョウと会った。
真っ白な世界・・音もない、無の世界・・。
誰もいないこの世界で突然彼が自分の前に現れた。
黒髪の少年・・・。どこか頼りなさげな少年。
こんな奴が歯車なわけない・・そう思った。
最初の夢では何も話さなかった。
それどころか彼は自分に怯えているようだった。
しかし、2度目の夢の中で リョウは彼女に問いかけた。
かすれた声・・まるで空気の音のような声。
『・・・君はだれ?』
彼女は感じた・・。
ああ、駄目だ。運命には逆らえない。
いつか、私はこの少年と出会うのだろう・・と。
そして・・出会った。
まるでシナリオであるかのように。
彼・・リョウ・コルトットと。
そう全てはシナリオのように・・。
一瞬の狂いも無く。
レオナはため息をついた。
重いため息。
もう時なのだ・・・。
ZEROが動き始め、自分はリョウと出会った。
その時、彼女の手から金色の鳥が羽を広げた。
まだ傷はあるが大丈夫のようだ・・。
「よかった・・クロード。無事で・・。大丈夫? 痛いところはない?」
レオナは心配そうな顔になり鳥に問いかける。
「ああ・・大丈夫だ。」
驚いたことに金色の鳥は言葉を話した。
その言葉を聞き、レオナはほっと笑顔を見せる。
心から安堵した、誰にも見せることのない笑顔だ。
「心配をかけて・・・すまない。」
鳥・・名をクロードという。
クロードは彼女の姿を見ると悲しげに俯いた。
「こんなに・・怪我をして・・。 すまない・・。僕がいたらないばかりに・・こんな・・。」
「いいの・・。私は平気。貴方が無事なら。」
そう言ってレオナは歩を進めた。
「・・・彼かい? 歯車というのは・・」
クロードの言葉にレオナは足を止める。
「ええ・・・。」
「一緒に行かなくて・・いいのか?」
「まだ少し・・・時間が欲しいの。」
「そうか・・・。」
そう言ってクロードは視線を落とした。
「また・・彼には近いうちに会うことになるのか・・?」
「ええ・・・近いうちに。きっと・・・。」
レオナはそう言うと視線を下に下ろした。
それを見たクロードはそれ以上、何も言わなかった。
彼らは道を進む。家路を目指して。
月明かりが彼らを照らしていた。
少年と姫君が再び出会うのは・・・そんなに遠い話ではない。
第八章 〜 月明かり〜 Fin